第5週「キツネノカミソリ」23話
「おまんは捨てたがじゃ。ほんなら振り返りな。代わりに何をするかじゃろう。人はすべてを持つことらできん。何かを選ぶことは、何かを捨てることじゃ」(何度聞いても心に響く名言じゃ)
タキがそう万太郎に伝えたそのとき、大きな風が吹く。
その先には…オレンジ色の彼岸花に似た花がいくつも咲いていた。
「燃えるようじゃ」「逸馬さんみたいね、逸馬さんが着ていた着物と同じ色」逸馬さんのようだと綾が最初に言ってくれるのがいいね。綾も綾なりに彼から何かを得たのだろう。
「本当にそうじゃ。この花は逸馬さんのようじゃ。おまん、なんて名じゃ」
「キツネノカミソリ」タキが答える。
「おばあちゃんはこの花の名前を知っちゅうがじゃね」
「長く生きとるからな。大したことじゃない」
「おばあちゃんともっともっと話していたらよかった、草のこと、聞いたらよかった」
キツネノカミソリを食い入るように観察する万太郎を見て、ナチュラルに手ぬぐいを差し出す竹雄。阿吽の呼吸に萌えるじゃん!!!
「標本を作るがじゃ。標本にしたらいつでも調べられる」
キツネノカミソリへ興味関心を注ぐ万太郎を、黙って見守るタキ。その表情からは、植物に熱中する孫の姿は愛おしくもあり、逞しくもありしかし、峰屋の当主であることを考えるとそれはそれは複雑で、それでもきっと送り出すしかないのだろう…そんな未来を描けてしまっているかのよう。
本当にいろんな感情を含んでいる表情で魅せられました。
峰屋に戻ると、万太郎と綾はこの度の騒動について改めてタキに頭を下げる。
そして、「ワシは姉ちゃんとは一緒にはなれん。ワシのことを頭ごなしに本気で叱ってくれる姉様じゃ。この世で一人しかいない姉様を、こんな形で失うのはいやじゃ」と伝えます。
「槙野の家を続かせることについては、私と万太郎がそれぞれに良い相手を見つけたらいい話」「綾は好きな相手がいると言いよったのう」
「その恋は終わりました。恋とは呼べん、ただの夢でした」スッキリした顔の綾。
その夢は、私が新しい酒を作って峰乃月と共に大勢の人に飲んでもらう。そして、峰屋をもっと大きくする、そういう夢。私の恋は、男の人にあったがじゃない、峰屋と酒造りにありました。ただ一緒に歩んでくれる相手が欲しかった。だから、相手はお婆ちゃんの言いつけに従う。婿をとらせてください。
「ほんで、ワシのことは勘当してください」
この発言を受けて「!?」顔のタキの表情がかわいいのよ。隠しきれない松坂慶子様のかわいさが出ちゃってるのよんw
ワシを植物学の道に進ませてください。東京に行かせてください。
どうせワシは体が弱かった。生き長らえるかわからんかった。生まれてこんほうがよかった、バッチーーーーン!(さすがのタキの堪忍袋もキレたぜよ)
怒りと悲しみのあまり出ていくタキを見て、「バカ! わがままなのは構わん。けんど、人の思いを踏みにじるのだけはいかん!」言ったそばから綾に叱られる万ちゃんデッス…。
綾の教訓、じわじわ響くわ。自分も忘れずにいますきに!
タキは自室に戻ると、仏壇の前で大きなため息を吐く。
追いかけてきた万太郎が「最後まで話を聞いて」と部屋の外から話しかける。
「生まれてこんほうがよかったなんて、金輪際、聞きとうない!」そりゃそうや。
「ワシほど幸せなもんはいない。ぬくぬく守られてきた。なのに、この家に生まれたおのこじゃき、そのことをずっと苦しく思ってきた。ワシ、酒も一滴も飲めん。みんなが懸命に働くのを眺めているだけ。ツラかった。なんで出来損ないが当主に生まれてきたがじゃろうって」
「出来損ない!?」 すかさず出来損ないワードに反応するタキ。先日の能無し猿呼ばわりにもブチ切れていたし、万太郎の才を信じている証だよね。
「けんど、やめた。そう思うがはやめたき。ワシはとびっきりの才がある。植物が好き、本が好き、植物の絵を描くのが好き。好きという才がある。この才はワシが峰屋に生まれてきたから育ててもらったもの。名教館に通わせてもらった。好きな本をなんでも買うてもうた。何よりお婆ちゃんがおってくれて、いつも人が大勢いて、寂しくなかった。みんなに守られて、好きいう才を育ててこれた。全部、峰屋に生まれたからこそ」
人はワシに石を投げるじゃろう。
運がいいだけの呑気ものじゃと。うん、ワシは運がいい。恵まれて生まれてきた。
母ちゃんがワシを産んでくれた。お婆ちゃん、みんながお日さんみたいに、ワシを育ててくれた。ワシにできることを果たしたい。
ほんじゃきワシは…何者かになりたいがよ
・キャスト・
作…長田育恵
槙野万太郎…神木隆之介(通称神木きゅん)
竹雄…志尊 淳
槙野 綾…佐久間由衣
タキ…松坂慶子
語り…宮崎あおい
主題歌…「愛の花」あいみょん
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