最後の妊娠判定日

最後と決めた移植が終わってその1週間後、妊娠判定のために私はクリニックにいた。
その日は、緊急事態宣言が出されると言われていた日でした。
(最初の緊急事態宣言なので2年以上経過してますね⁉︎ 本当に私ってやつは…)

妊娠判定日は、hcg値で着床の有無を調べ、私たちはその合否を知らされるシステム。
血液検査なので、大抵1時間ほどは待つ。(そういえば、尿検査で判定するクリニックもあったな。その話もいつか振り返りたい)

不妊治療の中で、妊娠判定のためにクリニックで待つ時間ほどイヤなものはなかった。
期待と不安と、どうせダメだという心の保険をかけ、また期待して不安になって…。
その繰り返しで、とにかく頭が締め付けられるような緊張が続く。

この日もほぼ同じだったと思う。
ただ、ふと「妊娠してたらそれもまた大変だな」という気持ちが芽生えてハッとした。
その年の春から、夫が転勤になったのだ。
「妊娠していたらどこで産む?」「どっちの産院に通う?」「私の仕事はどうなる?」

妊娠するためにバカだかいお金払って治療しているのに、よろしくない気持ち、とでもいうのだろうか。
これは所謂、今までの「どうせダメだ」という心の保険からくる気持ちとは違っていて、
自分の望む未来がなんなのか、見失うような感覚だった。

そんな妊娠判定日にそぐわないような気持ちでいたら、診察室に呼ばれた。
結果的には診察室に入ってすぐ、院長の醸し出す雰囲気でダメだったと悟ったわけだが、
机に置かれた、hcgの値が書かれた用紙の「0.0 」の数値を見て、
さっきまでいろいろグチャグチャしてたのに、妊娠とは無縁な自分には心底ガッカリしたし、
妊娠・出産する未来像がハラハラと消えてしまって、
また頭がしめつけられるように悲しかった。

だけど、クリニックを出て駅に向かって歩きながら今度は、
「これで終わったんだ、これで終われるんだ!」という開放感がやってきて、
不妊治療を妊娠・出産でゴールできなかった私だけど、
とにかく前を向きたいと切に思った。

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