第21週「ノジギク」102話
田邊の死を新聞で知ったその夜、長屋には波多野も訪れていた。
「大学から連絡があったよ。葬式は身内だけ、弔問もいっさいお断りしますって」←そりゃ、田邊家の対応としたらそうなるでしょうなぁ。
藤丸が耐えきれずに言った「大学が教授、殺したようなもんじゃない? これ、本当に事故?」というセリフも、それを受けて答えた万太郎のセリフも、どちらも、作り手からの過去への投げかけなのかな? なんて思ってしまった。
わからん、ほんまのことは。ただワシらは、ワシらだけは知っちゅう。田邊教授は、そんなお方じゃない。
桔梗の花が映り込み、千歳の「井戸の水、ちょっと冷たくなったね」のセリフから、8月のあの日から少し時間が経ったことがわかる。少し秋めいてきたこの日、聡子が長屋を訪ねてきました。
聡子、意外なほどスッキリとしたお顔をしていたのだけれど、そこに至るまでにはおなかの子が力をくれたんじゃないかと私なんかは思ってしまいます。命って本当に尊いものだよな。
初めて長屋というところにやって来た聡子。子どもたちがおりんや牛久亭と賑やかに過ごしているのを見て、「心強いものですね」と伝えるあたり、聡子の品が現れていて、とっても好き。
聡子は、田邊から万太郎への言付けを伝える。
「槙野に会うことがあったら、私の蔵書は槙野に譲る。私の植物学は終わった。この先は、Mr.MAKINOに」←Mr.MAKINOに、でほろり。万太郎への嫉妬でいっぱいいっぱいだったころは、呼び捨てやお前呼びをしていたから、久々に聞く万太郎への敬意ある呼び方に、田邊の心の平穏を感じてじんわり涙が出ました。
しかし、田邊の蔵書とともにあの黄緑色の胴乱もあってワイちゃんプチパニック! えっと、あれはたしか、徳永くんへのメッセージとして帝国大学に置いてきたやつ。「植物学を継ぐものへの大切なバトンなんだと思う」なんてキリリとまとめていたのに恥ずい! なんて思っていたんですけどぉ。ふとこれって、徳永くんが送り返してきたのか…と思ったら背筋凍ったわよ。そこはいくら田邊色を消している最中だとしても、もらっておけよ徳永!!!!(ただの妄想ですけど)
「ワシでええがでしょうか」
「旦那さまはお顔の広い方でございましたけれど、お心に残っているのは、槙野さまなのだと」←田邊贔屓のワイちゃんなんかはこれを聞いて、寿恵子お前思うところはないんかい! なんて思っちゃいましたよね。あははは。田邊への暴言、忘れてないからね、あははは!
田邊は大学を辞めた後「これで自由に旅ができる」と聡子に話していたんだとか。それは、負け惜しみでもなんでもない、でき得る限りでやり切った田邊がようやく手にした自由。教授室の机で海外の仲間に手紙を書いている田邊に、窓から心地よい風が入ってくる。そこからはかつて、万太郎を中心とした学生たちの笑い声が聞こえた場所。キャナメ、いい表情するわ〜〜〜〜〜!
旦那さまね、生きようとされていたんですよ。私と子どもたちと、それからこの子と。これから思う存分、生きようとされていたんです。
田邊の万太郎への想いは、十分すぎるほど描いている本作。万太郎がそれをどう受け止めているのかは、まだよくわからんな。いつか、わかるように描かれるといいけど、無理かもしれない。万太郎は結局のところ、人への興味があまりないのかもしれないからさ。。
聡子は出産後、寿恵子と浅草に雷おこしを食べに行く約束をする。「行きましょう任せて! 子どもたちみんな連れて、浅草行きましょう」請け合い方が逞しい寿恵子。逞しさと図々しさとかわいらしさが絶妙な加減で現れる、浜辺さんの演技が見ていて気持ちいいですね。
でもなんかね。聡子と寿恵子の友情はそう長くは続かないかなって思っちゃった。ここからはきっと、彼女たちの生きる道はグンっと違うものになるだろう。でもそれは悲しいことじゃない。友情は、見える形で続かなくても、確かに今はここにあった。それだけでもいいんだと思う。
田邊の蔵書を受け取り、万太郎はその中の一冊から押し花になったシダを見つける。
「教授…」
まだわからない。万太郎の心の中は、まだ読めない。
ギリッギリと言われても万太郎はピンと来ないよね(汗)
借金まみれの槙野家。草花バカの万太郎もそれはわかっていると思うけど、それでも寿恵子は、家計のあれこれを見せないようにしている様子。ため息混じりに金銭出入簿を眺めていたけど、万太郎が現れるとそれを隠すようにする。
それはなぜか。それはきっと、寿恵子のプライドなんじゃないかと思う。寿恵子は、万太郎を支える人なんじゃなくて、万太郎の植物学の金銭面をサポートするチームの一人としてありたいから、不甲斐ない結果を見せたくない。そんな感じ? 万太郎のためにしているんじゃなくて、自分事として携わっていたいんだと思う。
一緒に大冒険をしたい。そうやって生きるって決めたから、意地でもその歩みを止めるわけにはいかないのだ。
万太郎は寿恵子に田邊のことを考えていたと語りだす。
「教授にお会いして11年。あのころはまだ、植物学を始めようにも標本が足らん。そういうときじゃった」
標本を集めて、日本中に植物学を広めていくこと。それが、教授の志だった。けんど、今の大学は植物学を広めるどころか、却って、門を閉しちゅうがじゃ。
でも、万太郎のところには全国から手紙や標本が届くと言う。「返事を書いたら、植物学の種を植えられる。その種をひとつひとつ芽吹かせていく。それが、ワシにできることじゃ」←また、途方もないこと言ってるよ。寿恵子の「うん」が、その途方もない夢を前にして、さすがに悲しそうに聞こえたなぁ。
子どもたちからもらったかわいいお手紙を見せながら、学校の先生方に「授業で採集旅行の集いをやりたい言うて。誘ってくださったがじゃ」と伝える万太郎。ズッルッ!!!! 子どもたちの手紙を見せながら寿恵子に打診しようって、おそらくナチュラルに戦法を立ててるところが、この人の怖さだよな。無自覚な分、タチが悪い。(描写としてはもちろん好きですよ。万太郎は狂気を描いてこそ生きる。多分ねwww)
「それは行かなきゃ」って、だから寿恵子も間髪入れずに答えますよ。生徒たちも万太郎に会いたがっていると知らされて、ダメだとは言わない。ズル万太郎、本領発揮でっす!
でもさ「実は今、わが家ギリッギリなんです」ってせっかく家計の内情を万太郎に伝えたのに、なぜ寿恵子は「どうせなら日本中からじゃんじゃん呼んでもらって、万太郎さんが有名になったら」という、棚ぼた・他力本願的な思考で、版元を待っているんでしょう?? ここ、ずっと解せない(史実がそんな感じ?)
だから「踏ん張りましょう!」って言われても、何をどう応援したらいいか、気持ちの置き所が行方不明なのよね。でもどうやらようやくみえ叔母さんを頼るようなので、ようやく、自分ができることをちゃんとやる寿恵子の姿が見られそうで何よりです!
・キャスト・
作…長田育恵
槙野万太郎…神木隆之介(通称神木きゅん)
槙野寿恵子…浜辺美波
江口りん…安藤玉恵
笠崎みえ…宮澤エマ
波多野泰久…前原 滉
藤丸次郎…前原瑞樹
田邊聡子…中村青渚
牛久亭久兵衛…住田 隆
田邊彰久…要 潤
語り…宮崎あおい
主題歌…「愛の花」あいみょん
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